あとがき

 

 お初にお目にかかります、光村佳宵と申します。
『柳屋怪事帖 迷える魂、成仏させます』のあとがき、をご覧下さって、誠に有り難うございます。あとがき、とはいいましても、立派なことは何も書けませんので、何とはなしにお付き合い頂ければ幸いです。
 
 少し時間を遡りまして。受賞の連絡を頂いた時、エブリスタさんにすればとても失礼な話ですが、お名前を(かた)った詐欺だと疑って震えていました。それくらいの驚愕、晴天の霹靂(へきれき)だったのです。
 何しろ、初めてのweb投稿で緊張のあまり、投稿後に、血圧が上がりすぎてぶっ倒れる、というヘマをやらかしたくらいの、立派な蚤の心臓です。……蚤に怒られそうです。
 
 それはさておき。
 幽霊に(あやかし)に神使に、そこに呪いが加わった本作、少しでも楽しんで頂けましたか? ミステリーというよりはちょっと謎、くらいに捉えて下さると有り難く思います。まだだという方、お時間がありましたら、どうぞよろしくお願い致します。読んだ後や最中に、食べたい、苺大福! でも、蹴鞠しようぜ! でも、何かしら思って下されば嬉しい限りです。
 ご承知の通り、本作はフィクションがてんこ盛りですので、実際の人物や団体、場所などとは、一切(いっさい)合切(がっさい)関係ございません。化粧品メーカーや温泉宿、蕎麦屋さんに柳屋さんがいても、成仏の柳屋さんはいないと思われます。また、深夜に肝試しをしたり、閑静な住宅街で五寸釘を打ち付けたりしますと、呪い云々の前に、意外と物音が響いて、吃驚(びっくり)するくらいご近所迷惑です。ご注意下さい。
 
 閑話休題。
 謎は、魅力的ですね。
 謎、と一言に申し上げても、多種多様で千差万別。そして、人の心を惹き付けます。
 例えば、焼け付くような真夏の昼下がり。さんざめく蝉の声、近くを車も自転車も走っていて、人の気配だってあるのに、空気が死んだような静けさを感じた時。
 例えば、家族は皆出払っていて、自分一人しか家にいないはずなのに、ふと、誰かの気配や視線を感じた時。
 何とも不思議です。
 後者はその正体を人に尋ねると、答えは神様だったり、ご先祖様だったり、自分の良心や恐怖心だという方もいらっしゃるでしょう。何を答えるか、その人の心もまた謎であり、魅力的です。
 
 最後になりますが、感謝を伝えさせて頂きたく。
 元担当の三宅修司様、素敵な本にしましょうね、と励まして下さって、有り難うございました。その一言で、本になることへの期待と責任を持つことができました。
 編集の長谷川三希子様、校正して下さった方。最後の最後、ギリッギリまでお付き合い下さって、本当に有り難うございました。特に長谷川様には、不安を漏らす私を叱咤激励して頂きまして、とんでもなくお世話になりました。
 イラストを描いて下さったtoi8様、本当に有り難うございました。小学生の頃、粘土で犬の家族を作れば養豚場と言われ、花を描けばお化けだ人魂だとクラスメイトに泣かれた私からすれば、感動で声もありませんでした。
 身内と伴侶には迷惑と心配と心配、それから心配をかけました。主に心配しかかけていません。本当に申し訳ない。
 それから、昔からの友人達。忙しい中、お祝いの花を贈ってくれたYちゃん、ペンネームの由来にもなったブックカバーを贈ってくれたSちゃん。投稿したものの、やっぱりやめようとした時に声をかけて下さった方。
そして何より、拙作に興味を持って下さったあなたに、改めて感謝の言葉と気持ちを。
 心より御礼申し上げます。皆様のお陰で、一冊の本として、世に出すことができました。本当に、どうも有り難うございました。
 
 書籍が発売されるのは、梔子(くちなし)の花が香る頃でしょうか。心身ともに塞ぎがちな時期となりますが、どうぞお気を付け下さいね。
 それでは、失礼します。有り難うございました。

光村佳宵