放課後の帰宅部探偵 学校のジンクスと六色の謎 立ち読み

「全ての元凶は先輩にあり」
「なんだよ、私のせいかよ」
 僕は高校に入学して間もないが、彼女とこういうやり取りを、何度しただろうか。くしゃくしゃ頭で少し目つきの悪い女子、それが水縞先輩だ。
 まぁ、正確には今の会話は、
「ふへへほへんほほはへんはひひはい」
「はんはよ、ははひほへひはよ」
 みたいな感じなわけだが、水縞先輩がなにを言ってるのかなんて、ちゃんと聞こえなくてもだいたいわかるようになった。
 僕は今、人生で初めて猿ぐつわを噛まされている。
 水縞先輩が眉を曲げてじろりと僕を見てくる。文句を言いたげだが、水縞先輩の口にも猿ぐつわが噛まされているので、文句は口の中で留まっているようだ。
 僕たちがなにをしているのか?
 そう問われれば、部活動の最中だと言える。だが、演劇部ではないし、放送部や映画研究部なんかの撮影の一環でもない。
 まずは僕たちが何部なのか、そこから始めようと思う。



 時間が流れるのはあっという間のことである。
 光陰矢の如し、烏兎怱怱、歳月人を待たず、月日は百代の過客にして、なんてことわざや格言なんてものがゴロゴロと転がっている。
 先人たちも「あぁ、俺は青春を棒に振った」と思ったのではないだろうか。だからこそ一度しかない青春時代を、高校生活を棒に振るなよ、と人生の先輩方は憐憫と自己愛に満ちた表現で遺したのだろう……まぁ、松尾芭蕉の高校生活は知らないけど。
 だから、時間が流れるのはあっという間なんて、そんなことは言わずもがなだ。
 中学生活三年間で、僕は多くのことを学んだ。しかし、最も深く理解できたのは日本の歴史でも因数分解でもなく、「三年間はあっという間である」ということだった。
 小学校は無駄に長いな、と思っていたが中学校はあっという間だった。おそらく、「子ども扱いしくさって、僕が小学生じゃなければ」と思う気持ちが六年間を長く感じさせたのだろう。
 だが、その先に待っていた三年間というものはどうやら短いらしい、と気づいたのは中学二年生の夏頃だった。そもそも中学生活の折り返し地点が中二の夏なんて油断しきっている時期にあることが、誰かがしかけた罠だとしか考えられない。
 中二の夏、部活動をしていなかった僕は、家で本を読んだり、花火を見に行ったり、なにか面白いことはないかとぶらぶら過ごしていた。
 中学生であれば、色々と人生の巻き返しポイントはあったはずだ。
 例えば、スポーツに打ち込めばゆくゆくはプロになっても不思議ではない。しかし僕は、部活動をせずに過ごし、かといって恋を患いもがき苦しんで人として成長することもなかった。
 思い出と呼べるのは、利き炭酸飲料選手権大会を身内で開催したり、台風の日に現れたUFOの噂を聞いて探したりといった、他愛もないものばかりだった。
 振り返るとそこにはなにもない。驚くほどなにも残っていない。
 ゆえに、僕は考えた。同じ過ちを繰り返してはいけない。人間は学習する生き物だ。
 高校では活力を持って、何事にも精力的に取り組み青春を謳歌するのだ! と胸に誓った。
 高校生活三年間という青春を棒に振ってはならない。バットを振らなければ、ボールには当たらない。バッターボックスに立たなければ、ホームランは打てない。部活動をしなければ、青春を謳歌できない。
 僕、森山深緑の青春はこれから始まる。
「なんだよ、森山は野球部に入るのかよお?」
 隣の席の小太りの同級生、藤龍之介が尋ねてくる。いや、僕の話はそういう意味ではない。
「入らないよ。僕はバットを持ったことがないし、キャッチボールをしたことだってない」
 野球の知識は、ホームランを打つと点が入るということと、グローブを利き手と逆の方に付ける、くらいしかない。
「藤は何部に入るか決めたか?」
「俺は漫研でいいかなあ。適当に漫画とアニメの話ができる社交場でだべれれば、それでいいよ」
「志の低い奴め」
「そろそろ入学式から一週間経つぞ、森山は何部にするんだ?」
「それは……まだ決めてないけど」
 藤が一拍置き、ゆっくりと口を開く。
「むしょく」
「無職?」
「色がない、で無色。部活が多いこの学校で、なにもしてない奴らは無色って呼ばれてるんだってさ」
 青春時代になにかに打ち込めない人間の将来は無職だぞ、という不吉な予言に思えて、体がぶるりと震える。
「体育館での部活紹介、今日までだぞ」
「わかってるよ。僕の青春が無色なわけがないだろ」
 そんな会話をしたのが、今日の昼休みだった。

 放課後になり、僕は体育館にいる。
 僕と同じく、新入生たちはそわそわと、期待と興奮に胸を躍らせているように見える。
 中学生になった時、上級生は大人だな、と思った記憶があるが、高校生になってもそれに似た感覚を覚えた。先輩たちにはどことなく余裕があり、大人びて見える。
 中学では詰襟だったが高校ではブレザーになった。その服装の変化も大きな原因かもしれない。ブレザーやネクタイを微妙に着崩している先輩が多く、なんだか洒落ている。きっちり制服を着ている僕らは、まだまだ子どもに見えるだろう。
 体育館の中では、今日は文化系の部が集まり、机やのぼりで作られたブースが並べられている。
 美術部は持ち込んだ石膏像の木炭デッサンをし、音楽部はアコースティックギターで生演奏をし、鉄道研究部がNゲージを走らせている。将棋部の、顧問との記念対局や、自転車を漕いで発電をしている科学部なども興味深い。
 なんとなく、屋台が並ぶ神社のようなお祭りに似た雰囲気があり、気分が高揚した。
 だが、油断してはならない。ここは新入生を待ち構える先輩たちと、受けて立とうという僕らの戦場である。隙を見せれば、「ちょっとここに名前を書いてみてよ」と署名を促され、部活動紹介期間が終われば、「困るなぁ、サインしたよね?」とどこかの部室に連行されてしまうかもしれない。
 私立湊第二高等学校は豊富な部活動が有名で、ジャグリング部や陶芸部やミュージカル部なんてものもある。選択肢が多いということはこれ即ち、青春の謳歌への道は選び放題だとも言える。僕が入学を志望した理由もそこにある。
 例えば、美術部に入れば絵の技術もめきめきと上達し、ハイレベルな絵しりとりを部員同士で行うことができるだろう。手品部に入れば今後の人生で自己紹介の際に一芸を披露することができて、困ることはないかもしれない。
 どうせならこの学校でしか味わえない体験をしたいなぁ、と周囲を眺めていたら、ふいに背後から声をかけられた。
「あっ、森山君、だよね?」
 振り返ると、女子が一人立っていた。
 肩下あたりまで伸ばした髪で、前髪はヘアピンで留めている。目をぱちくりとさせながら尋ねてきた彼女は、確か──。
「日高さん、だよね? また会ったね」
「やっぱり、わたしたちは文化系だねぇ」
 僕は昨日、体育会系への道を歩もうとしていた。
 どうせなら体を動かし、爽やかな汗を流し、健全な肉体と健全な精神を手に入れようと、畏れ多くも運動部の部活動紹介へ見学に行ったのだ。
 そこで、バドミントン部ならば適度な運動ができてよいのではないか? と思ったのだが、それが間違いだった。
 体育館で行われていたバドミントン部の模擬戦は、僕の想像していたそれではなかった。
 僕の想像したバドミントンは、休日の公園で友達や家族と「そーれ」と言いながらお正月の羽根つきのように遊ぶものだ。
 しかし、高校の部活動でのバドミントンは、シャトルをラケットで打つ以外、僕の想像とは別物だった。
 まず、運動量が多い。俊敏にコートの中を動き回り、ラケットを華麗に捌いてシャトルを打ち返さなければならない。動体視力は悪い方ではないと思うのだが、速すぎてシャトルを視界に捉えることができなかった。
 すぐに、僕は運動部に向いていないと悟った。
 そっと体育館から出た時に、隣の女子バドミントン部からもこっそり出てきた女子がいた。僕と同様に口を大きくあんぐりと開けて呆気に取られていた彼女が、同じクラスの日高さんだったというわけだ。
「日高さんも、体育会系はやっぱり?」
「七海でいいよ。わたしには無理だねぇ。ボウリング同好会っていうのも見学に行ったんだけど、みんな目が本気だったよ」
 サバンナで生きていけない生き物がその地を去るように、僕たちは体育会系の部活動に背を向けた。千尋の谷へ突き落とされるまでもなく、辞退した。己の力量を知っているからこそできる軽業だ。
「七海さんは何部が気になった?」
「そうだねぇ、吹奏楽部は体育会系文化部らしいからやめとくとして、気になるのは園芸部、演劇部、手芸部、放送部、あとのんびりできそうな茶道部かなぁ」
 気になる基準がわからないが、自分も似たようなものか、と納得する。目移りしてしまい、決めかねる気持ちはとてもわかる。
「森山君は何部に興味があるの?」
「まだ決めかねてるんだけど、どうせならなにか特別な部がいいね。この学校にしかないような」
「確かに、変な部もあるもんね」
 部活動の種類が多いからこそ、本当に我が青春を捧げるにふさわしい部活動なのか? 満足に足るものなのか? と疑心暗鬼になってしまう。
「そういえば、隠れ倶楽部って知ってる?」
「隠れ倶楽部?」
 とっても好奇心を刺激された。なんだその部活動は。
 胸が高鳴るその響きは、電気が走るようにびりびりと全身を巡った。
「この前、図書室で聞いた噂話なんだけど『知る人ぞ知る部活』らしいんだよね。この学校の中でも相当珍しいらしいよ」
「ちょっと詳しく」と尋ねようとした時、「おーい、七海ー」という声が遠くから飛んできた。七海さんが振り返って呼びかけてきた女子に返事をする。
「呼ばれちゃった。ごめんね森山君。お互い部活探し頑張ろうね!」
 そう言って放送部の方へ行ってしまった。追いかけて話を聞くこともできるが、女子数名となにやら談笑を始めてしまった今、迷惑になるだろう。
 だが、面白い話を聞いた。
「隠れ倶楽部」
 もう一度口にしてみると、自然と笑みがこぼれた。
 自覚しているが、僕はこういうのに弱い。
 小さい頃から「好奇心に足が生えた」と言われていた僕にとって、そんな魅力的な名前のものを放っておくわけにはいかない。好奇心という獣が、テンションを上げている。
 隠れ倶楽部とはどんなことをする部活動なのだろうか。
 放課後や学校行事で人知れずに暗躍したり秘密の宴を開いたりするのかもしれないし、胸がときめくようなイベントや事件に出会い、立ち向かうクラブなのかもしれない。
 僕は興奮ではやる気持ちを抑えながら、そっと体育館に背を向けた。
 隠れ倶楽部なるものが、部活動紹介で堂々とブースを構えているはずがないからだ。

 体育館を離れ、二年校舎へ向かう。視界の隅に、暖冬の影響でまだ開花している桜の木々が目に入る。なんだか励まされているような気がして、僕はそっとうなずいた。
 この高校は一学年が十二クラスもあるマンモス校なので、学年ごとに校舎が違う。下駄箱を設置するとそれだけスペースを喰ってしまうからか、上履きはない。体育の授業でもない限り革靴のまま移動できるのは、楽でありがたい。
 放課後であまり人がいないとはいえ、上級生の校舎に入るのは緊張し、そわそわとしてしまう。だがこれも隠れ倶楽部を見つける為だ。そう思えば、今はまさに冒険中ということになり、心が躍る。
 二年校舎は一年校舎の向かいにあり、廊下の窓から二年校舎のベランダを見ることができる。先輩たちが監視をしているわけではないけど、運動部に入った一年生は廊下に出るたびに二年校舎へ礼をしていた。体育会系の上下関係を目の当たりにして、やはり僕には運動部は向いていないな、と二年生の教室越しに一年校舎を眺めながら思ったりしていた。
 「2―1」というプレートのついた教室を見つける。二年一組には坂上さんがいる。坂上さんは小中と同じ学校で、面倒見のよい近所のお兄さんだ。入学前に「なにかあったら俺を頼れよな」と言ってくれていたから、早速頼ってみることにしよう。
 扉が開いていたのでノックはせず、「失礼します」と言って顔だけ中に入れる。
 電気の消えた教室では女子生徒が一人、イヤフォンをつけたまま机の上に座って文庫本を開いていた。ふわふわとくしゃくしゃの中間の髪を掻き回し、考え事でもしているのか、うーんと唸り声をあげている。
「あのー」
「ん? 誰、お前。一年?」
 彼女はびくっと体を強張らせてイヤフォンを外してから、じろりと僕を見た。
 小柄だからか、なんとなく警戒心の強い猫を思わせる。
「え、あっはい。そうです」
 学年カラーがあり、一年は青いネクタイ、二年は赤いネクタイ、三年は緑のネクタイをしている。女子のリボンの色も同様だ。彼女は僕のネクタイを見て判断したのだろう。
「なに? なにか用?」
「あっ、いえ。坂上さんに会いに来たんですけど」
「坂上? 部活じゃない?」
 しまった、そうだ、と内心で舌を打つ。
 坂上さんは剣道部に入っている。部活動をやっている坂上さんが、放課後の教室で暇を潰しているわけがない。勇み足だった、と反省する。
「坂上に会ったら、用件伝えとこうか?」
「あっ、いいえ。大した用事ではないので」
「わざわざ上級生の教室まで来たのにか?」
「ちょっと聞きたいことがあったんですけど」
 そう返しながら、そうだ、と思いつく。
 このくしゃくしゃ頭に三白眼の、ちょっと目つきの悪い先輩も上級生なのだから、僕より学校に詳しいはずだ。つまり隠れ倶楽部のことを知っている可能性が高い。
「あの先輩、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど、いいですか?」
「なに?」
「隠れ倶楽部ってご存知ですか?」
 先輩がきょとんとした後、あー、となにかに納得するような顔をした。
 この反応は、なにか知っているのかもしれないぞ、と僕は質問を重ねる。
「なんでも、この湊二高にある、知る人ぞ知る珍しい部活らしいんですけど」
 先輩は口元に手をやり、ふんふんとうなずきながら顎を撫ぜ、しばし思案するような間を置いてから、僕と目線を合わせた。教室の窓を背にしているのに先輩の切れ長の目が妖しく光ったように見えて、自然と背筋が伸びる。
「はいはい、隠れ倶楽部ね。知ってるよ」
「本当ですか!?」
 興奮のせいで知らず声が大きくなる。
 まさか調べ始めてすぐに知っている人が見つかるとは思ってもみなかった。肩透かし感と発見の悦びがせめぎ合う。好奇心を満たすには少し物足りない気もするが、まずは情報が欲しい。
「何部なんですか?」
「それはちょっと言えないなぁ」
 焦らされて多少むっとしたが、簡単に手に入るものに価値はない。僕は堪えて「せめて、ヒント、ヒントだけでも教えて下さいよ」と頼んでみる。
「ヒント? ヒントかぁ。この高校が創立された時からある、伝統ある非公認の倶楽部ってとこかな。部員の数も少ないね。互いが顔を知らないこともある」
 伝統ある非公認の倶楽部、なんと好奇心がくすぐられる部なのだろうか。
「ここだけの話、なにを隠そう私はその部員なんだ。いやはや、今年の一年は情報通というか、早いなぁ」
 先輩が腕を組み、値踏みをするように僕を眺める。
「まさか、みんなこの噂を知ってるってわけじゃないよな?」
「ええ、多分……あまり知られてないのではないかと。僕もついさっき知りましたし」
「じゃあ、えぇっと」
 先輩が僕を見ながら言葉を探している。そういえば名乗ってなかった。
「森山深緑、森に山、深い緑で深緑です」
「なんだか鬱蒼としてる名前だな、まぁいいや。森山、他言無用で頼むよ」
「わかりました」
 だがここで、ふと疑問に思う。僕は入部する前提になっていないか?
 そもそも何部なのか、坂上さんに尋ねに来たのだが──。
「森山、早速だけどこの後は時間ある?」
 反射的に、「はい!」と返事をしてしまう。
「じゃあ、入部テストを始めよう」

 二年校舎を出て、一人図書室へと向かう。
 教室で別れ際に先輩からルーズリーフと小さなビニール袋を手渡された。書店の名前がプリントされている緑色の袋だ。これといって特徴的なものではない。
 袋の中身はなにかというと、赤い付箋と、横型のA4三つ折りサイズの洋形封筒と、文庫本一冊だった。
文庫本には書店のカバーが掛けられ、輪ゴムで括られている。
 洋形封筒はシンプルなものだが、綴じている口の部分に星が描かれていた。
 封筒の中身はなんですかと聞いてみたら、中身は見るなよ、と釘を刺された。
「無事に戻って来れたら、教えてやるからさ」と言う先輩の、意味深な笑顔が頭から離れず、袋を見つめて歩を進める。
 図書室は体育館の隣にある。結局、元いた場所の近くに戻って来てしまった。
 しかし、みんなが部活動の勧誘を受けている中、すぐ隣で隠れ倶楽部の入部テストが行われているなんて誰も思うまい。そう考えると、ぴりりとした緊張感を覚えた。
 一体、なにが待ち受けているのだろうか? と気持ちがはやり、歩くスピードも上がる。
 どこかの部の上級生たちが新入生の列を引きつれて行くのを眺めながら、僕は図書室を目指した。
 図書室の前には『図書室』と書かれた大きな立札と、閉室時の返却用の青いポストが設置されていた。入室する前にもう一度確認しておこうと、先輩からもらったルーズリーフをブレザーのポケットから取り出す。

【一、図書室の中では周囲に気を配るべし。常に誰かに監視されていると思え。
 一、文庫本を自習スペースの台車にある、赤い背表紙の本の右隣に置け。
 一、赤い付箋を文庫『モンテ・クリスト伯』の二巻の表紙に貼れ。
 一、手紙を『月刊UFO』の三十八号の中に挟め。
 一、最後に、芥川龍之介の『羅生門』の文庫を借りよ。
 一、以上のことを、不審に思われないように達成せよ。
 一、人の手を借りることは好ましくない。
 一、帰り道に正門前の噴水にある、亀の上を歩いて渡れ。】

 先輩がなにやらがさごそと用意し、僕に渡したミッションを眺める。
 一行に一文入るよう、達筆な文字で記入されていた。
 文面だけ読めばえらく地味だが、誰にも悟られずに行動しなければならないなんて、なんだかスパイのようだ。
 腕時計を見ると四時十五分だった。五時までに終わらせて戻ってこい、と言われたがそこまで時間のかかるものではない気がする。だが、入部テストと言うからにはなにか困難が待ち受けているのかもしれない。
 生唾を飲み込み、図書室の扉を開くと、ふわっと紙とインクの香りが広がった。