あとがき

 

 今回もこちらのページまで足を運んでいただき、ありがとうございます。葛来奈都です。
 早いもので「花屋の倅と寺息子」も4巻目となりました。ここまで来られたのも応援してくれる皆様のおかげです。また拙著を読んでくれた方々からのメッセージもとても支えになっております。この場を借りてお礼申し上げます。
 
 
 4巻は2年生の秋編です。エブリスタで書かせていただいたのはおよそ3年前――24歳の頃でした。社会人という環境の変化に苦戦しながらもようやく仕事に慣れ、時間的にも精神的にも余裕ができた頃だったと思います。
 しかし、社会の荒波に揉まれたからか私の価値観も1〜2巻を書いていた学生時代と比べてだいぶ変わってしまいました。良くも悪くも大人になったのでしょう。
 価値観が変わった一方で、改めて「花屋の倅と寺息子」の原点に戻ろうと思った時期でもありました。大切なものを失った悲しみの中で、遺された人がどう生きるか……今だからこそ、書ける世界があると思ったのです。
 
 悟と統吾もこれまでの経験を通じてより成長してくれましたが、彼らとの付き合いも長くなってきたからか、二人の言動にも彼らなりの正義や信念が宿ってきた気がします。
 特に統吾はよく頑張ってくれました。私自身がようやく彼本来の魅力に気づけたのでしょう。得意なことをやらせてみたら想像以上に活躍してくれました。彼の行動に少しでも何かを感じてくれたら作者として本望です。
 一方、悟は初めてホラー回を担っております。ホラー回はいつも絶叫担当(?)の統吾にやってもらっていたのですが、淡々とした彼がやるとこんな感じになりました。この話は密かに私のお気に入りなので、みなさんにも楽しんでもらえたら嬉しく思います。
 
 そんな4巻ですが、1つだけ例外があります。メインタイトルでもある「柄沢悟と蓮の花」です。
 先ほど、4巻に収録されている話は24歳の時に書いたと書きましたが、こちらの章だけは去年の秋に書いた最新章です。エブリスタでも同タイトルで掲載されていますが、あちらは3年生の初夏と4巻収録分と時系列が違いますので一部内容を変えています。ご了承ください。
 
「花屋の倅と寺息子」は『それでも世界は変わらない』というテーマで書いています。
 どんなに悲しいことや苦しいことがあろうとも、変わらず朝日は昇るし、夜は来る。変わるのは自分自身であって、世界は何も変わらない――それがどんなに「非」日常的な生活であろうとも、彼らにとってはその生活が日常です。キャラクターの数だけ世界があります。そんな彼らの世界をこれからも紡いでいけるよう頑張りますので、今後も見守っていただけたら幸いです。
 
 
 最後に懇切丁寧にご指導してくれた長谷川三希子様はじめ編集部の皆様。デザイン、組版、校正などをしていただいた出版関係者の皆様や印刷会社様。1巻でキャラクター原案とキャラクターデザインをしてくださったvient様。2巻、3巻に続いて素敵なイラストを描いてくださった藤村ゆかこ様。今回も大変お世話になりました。心から感謝しております。
 また、作家としての私を優しく見守ってくれる家族、職場の方々、友人。応援してくれる太田生花店様をはじめとした故郷の人たち。いつも励ましてくれたり、相談にのってくれるSKYHIGH文庫の作家の皆様と、大学生活の記憶が薄れてしまった私に色々と教えてくれる現役大学生のクリエイター仲間たち。この作品を読んでくれた方々……皆様のおかげで私はここにいます。本当にありがとうございました。
 
 
 2017年3月10日に発売された拙著2巻の1年後の物語が、翌年の同じ日にちに発売されるなんてとても不思議な縁を感じました。
 拙著を手に取ってくれた皆様に、そして小説を書くきっかけを与えてくれた亡き母に、彼らの世界に託した私の思いが少しでも届くことを願っております。
 

葛来奈都