あとがき

 

 こんにちは、階 知彦(かい・ともひこ)と申します。
 この『シャーベット・ゲーム 四つの題名』は、今年(2016年)の9月に刊行された『オレンジ色の研究』の続編となります。たった3ヶ月で続編が刊行になるということで、僕自身、とても驚いています。
 これもひとえに、前作を読んでくださった読者の皆様、応援してくださった書店の皆様のおかげです。本当にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。
 
 
 さて、読者の方々にはすでにお気づきのことと思いますが、このシリーズのタイトルは、かの有名な名探偵〈シャーロック・ホームズ〉の活躍する物語のタイトルになぞらえて命名しています。たとえば前作の『オレンジ色の研究』は、シャーロック・ホームズが登場する最初の長編作品『緋色の研究』から取っています。
 そして今回収録の各話のタイトルはそれぞれ、第2長編『四つの署名』と、短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている『まだらの紐』に由来します。(邦題は出版社や訳者様によって多少異なったりしますが)
『四つの署名』は『緋色の研究』に比べるとやや馴染みの薄い作品かも知れませんが、事件の面白さもさることながらこの話にはある〈重要な人物〉が登場しますので、「名前しか知らない」「初めて聞いた」という方があればこれを機会にぜひ一度手に取ってみていただけたらと思います。
 一方の『まだらの紐』は非常に有名な短編で、こちらはホームズファンならずとも一度はどこかで耳にしたことのあるものかと思います。双子姉妹の姉が寝室で「まだらの紐……」と言い残して謎の死を遂げる、あのおどろおどろしい事件です。
 
 ちなみに本シリーズでもじっているのはタイトルだけではなく、ふたりの主人公に始まり、喫茶店の夫婦、刑事たち、同級生、学校の先生の名前、川の名前、駅の名前、訪れる店の名前、会社名、事件現場やその地名などに至るまで、多くの固有名詞がオリジナルのホームズ物語のものに由来しています。
 お時間がありましたらホームズ物語本編の方もあわせてお読みいただくと、「なるほど、『シャーベット・ゲーム』のアノ名前はコレから取っていたのだな」とにやにやしていただけるかと思います。(お友達に紹介していただく時の話題にもなるかと思います)
 
 
 今作ではいよいよ、沙緒子と園子が本家ホームズよろしく、諮問探偵への道を歩み始めます。ふたりにもたらされるのはどんな事件なのか。そして、ふたりはそれをどのようにして解決へと導くのか──。
 彼女たちの活躍をぜひお楽しみください。
 
 
 最後に。
 前作『オレンジ色の研究』に、シャーロック・ホームズのファンや関係者の方々からたくさんの温かいご声援をいただきました。ありがとうございました。拙作を世に出すにあたって個人的には非常に懸念していたところでしたが、それもどこかへ吹き飛んでしまいました。
 小説を書くテーマとして〈シャーロック・ホームズ〉を選んで本当によかったと、今は心から思っています。
 そして彼らにも「ありがとう」と言わせてください。
 我らが名探偵シャーロック・ホームズと、その親友ジョン・H・ワトソンに。
 

階 知彦