あとがき

 
 

 お久しぶりです。葛来奈都です。
 前回こちらでお会いしたのは平成が終わる直前でした。あれから2年。皆様どうお過ごしでしょうか。
 この2年で世界は随分と変わってしまいました。私だけでなく、日本中……そして世界中が。その変化に苦しんだ方もたくさんいたと思います。私もその1人です。

 今だからお話してしまいますが、最近まで人生で最大級のスランプに陥ってました。世界や社会の変化に伴って体調を崩し、心身共に弱ってしまったせいでしょうか。指が動かないのです。以前は毎日書いていたのにそれが2日に1回になり、1週間に1回になり、最終的にはまったく書けなくなってしまいました。書かなくては生きていけないこの自分が、です。

 そんな中、ご縁があって久しぶりに「花屋の倅と寺息子」の世界に戻ってきました。このどスランプの中で彼らの世界に飛び込めるかドキドキしていましたが、悟も統吾も変わらず私のことを迎え入れてくれました。たとえ私の世界がこんなに変わっても、悟と統吾の世界は何も変わらない。扉を開いただけでいつもと同じように私に手を伸ばしてくれる。彼らの世界に触れて救われたのは他でもなく、作者の私でした。
 本を開いただけで世界は広がる。物語の世界に触れられる。書くほうも、読むほうも、その感覚は同じなのではないでしょうか。今作を取り組むことで改めて「小説」という尊い存在に気づかされたように思います。

 そんな「花屋の倅と寺息子」もなんと6巻目。ついに第2シーズンが始まってしまいました。
第1シーズンはデビュー前に書ききっていたのですが、第2シーズンはエブリスタでも進行が途中なので彼らがどうなるか私ですらわかっておりません。しかし、悟と統吾のことですからどんなピンチがあってもサラッと解決してしまうのでしょう。本当、2人とも強くなったものです。第2シーズンに入って成長した悟と統吾をぜひともご覧ください。なお、今作は普段から2人を支えてくれている種岡と瞑も頑張っています。そちらにもご注目していただければ嬉しく思います。
 「花屋の倅と寺息子」もエブリスタで公開してから来年2月で10年が経とうとしております。10年経ってもまだまだ終わる気配がありませんが、エブリスタのほうは責任もって最後までお届けするつもりでいます。そちらもどうぞよろしくお願い致します。

 さて、今回もたくさんの方々にお世話になりました。長谷川三希子様をはじめとした編集部の皆様。デザイン、組版、校正などをやってくれた出版関係者の皆様や印刷会社様。キャラクター原案を担当してくださったvient様。いつも素敵なイラストを描いてくださる藤村ゆかこ様。皆様とこうして再びお仕事ができて光栄でした。今回も大変お世話になりました。そして世界の混乱につぶされてしまいそうだった私を引き戻してくれて本当にありがとうございました。
 また、勤め先の皆様にはいつにも増してご迷惑をおかけしました。こちらの協力がなければまず脱稿はできなかったです。ありがとうございました。
 それと、いつも陰ながら見守ってくれる家族、友人、応援してくれる地元の皆様。拙著を取り扱ってくれる書店様や購入してくれる読者の皆様。直接感謝の言葉も言いにくい世の中になってしまいましたのでこの場を借りてお礼申し上げます。特に新たなパソコンを買ってくれた主人。君が間違いなく今回のMVPだ。本当にありがとう。
 感謝を述べるには忘れてはいけない人物……いや、猫物もいますね。故郷にいる小さな友人。君が私と遊んでくれなければあの話は書けませんでした。また会うことができたら感謝の印に思う存分私の手をがじがじしてください。

 そしてそして、なんと「花屋の倅と寺息子」がコミカライズ化致しました。
 もうすでにインターネットサイトで電子書籍版を見ることができますが、笹田さな様が素敵に描いでくださっております。
 コミカライズ版は凄いです。このあとどうなるのか全部知っている原作者ですらネームの段階でたまに泣きます。それくらい魅力的な作品に仕上げてくださっておりますので、こちらもご覧いただければ幸いです。

 図らずも「自分にできることは何か」「自分が本当にやりたいことは何か」いろいろと考えることが増えました。
 限られた時間の中で私の脳内にある世界をどこまで具現化できるか。相変わらず行き当たりばったりで書いておりますが、またどこかの世界でお会いできるよう精進して参ります。
最後になりますが、皆様の世界がどうか穏やかで、健やかでありますように。それでは。

葛来奈都