あとがき

 
 

 初めまして、階 知彦(かい・ともひこ)と申します。
 『シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究』をお読みくださった皆様、誠にありがとうございました。また、ご興味を持ってこの〈あとがき〉ページにアクセスしてくださった皆様も、ありがとうございます。
 
 
 僕は幼い頃から推理クイズが好きでした。
 名探偵気分で事件に挑む、ワクワクとした気持ち。そしてたった1、2ページという短い文章と挿し絵の中に必ずヒントがあって、それに気づいてきちんと考えさえすれば、誰でもぴたりと答えの出る公平さと爽快感。
 そんな推理クイズ集が僕の愛読書で、同じ本を何度も何度も読み返していました。答えなどすでに読んで知っているのに、そんなことはおかまいなしで。
 
 やがて時は流れて大人になった僕は、そういう問題を自分でも作って誰かに出してみたくなりました。
 〈問題〉は短いながらも場面設定のある物語になっていて、〈答え〉でその登場人物が謎を見事に看破するのですが、読む人がそれを先回りして答える。もちろん、登場人物と読む人の持っている情報は同じ。登場人物になり代わったつもりで考えてもいいし、あるいはライバルとして登場人物自身と競うこともできるような──。
 そんなことをあれこれ考えた時、問題と答えそれ自体に負けず劣らず重要な要素だったのが、それを解決する登場人物でした。
 本物の推理小説に出てくる名探偵のように、切れ味鋭く。
 でも、すぐそばにいるかも知れないような身近な存在。
 ──そうして生まれたのが本作の主人公ふたり、沙緒子(さおこ)と園子(そのこ)でした。
 ふたりの活躍の場は最初はたった数行の文章でしたが、僕の好奇心からそれは徐々に長くなり、謎も少しずつ複雑になり、小説投稿サイトを経て、ついにはこうして文庫本になってしまったというわけなのです。
 だからそもそもからして彼女たちは、異能も持っていないし、特務機関に属してもいません。ただ真相にたどり着きたいがために、よく見て、自分の持っている知識と情報に照らしてよく考える。それを貫いていくだけです。
 これからこの本をお読みくださる皆様はぜひ、謎の解決に向かって一心不乱に挑んでいくふたりを、応援してあげていただけたらと思います。
 そしてもし、彼女たちと一緒になって謎に挑んでくださる方があるのなら、僕自身はもちろんのこと、沙緒子と園子もきっと喜ぶことでしょう。(沙緒子はふふっと笑うだけかも知れませんが)
 
 
 最後に。
 E★エブリスタ掲載時から拙作を読み、応援してくださった皆様、書籍化が決まった際にまるで自分のことのように喜んでくださった愛読者の皆様と、レーベル創刊と書籍化にあたって尽力なされた株式会社メディアソフトの長谷川様にこの場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

階 知彦